ハイトレル

成形加工について

1.予備乾燥

0.1%以上に、吸湿したペレットの使用は、溶融成形中のポリマーの加水分解を伴い、物性低下の原因となりますので、水分率を0.1%以下にするための乾燥処理が必要になります。
乾燥条件は、以下を目安に熱風乾燥を行ってください。

■ハイトレル®の乾燥

グレード 温度(°C) 時間(hrs.)
SB654、SB704
SB754
4001TX04
3046
4047N、4057N、4767N
2551
80〜90 3
5557、6347、7247
2571、2751
90〜100 3

※熱風乾燥機又は除湿装置付き熱風乾燥機を使用ください。

■ハイ卜レル5557の乾燥、吸水曲線

2.流動性

(1)溶融粘度
材料の流動性を支配する要因の1つは、溶融粘度です。溶融粘度は温度およびずり速度の影響を受けます。ハイトレル®の溶融粘度の温度依存性および、ずり速度依存性を以下に示します。

  • ■溶融粘度の温度依存性
  • ■溶融粘度の温度依存性

(2)射出成形時の流動性
ハイトレル®の代表グレードのスパイラルフロー長さを以下に示します。なお実成形品での流動長さは、下図の値の60〜70%程度と見積ることをお奨めします。

■ハイトレル®のスパイラルフローの長さ

測定条件:
成形機:ネスタール150/75
サイクル:5/5(Total 17sec.)
型温:50 °C
製品巾:10mm

3.標準成形条件

ハイトレル®の標準射出成形条件および押出成形条件を以下に示します。

(a)射出成形(成形機容量:3oz、成形品厚み:1.9〜3.2mmt)

■ハイトレル®の標準射出成形条件

SB654
SB704
SB754
4057N
3046
4047N
4001TX04
2551
4767N 5557
6347
7247
2571
2751
ホッパ下部 水冷 水冷 水冷 水冷 水冷 水冷
シリンダー温度(°C) ホッパ側 160〜200 160〜180 180〜200 190〜210 200〜220 210〜230
中央部 180〜220 170〜200 190〜220 210〜230 220〜235 225〜245
ノズル側 190〜230 180〜210 200〜230 215〜240 220〜245 225〜250
ノズル 190〜230 180〜210 200〜230 215〜240 220〜245 225〜250
金型温度(°C) 35〜55 20〜50 40〜60 40〜60 40〜60 40〜70
成形サイクル(sec.)
射出/保圧/冷却 5/15/30 2/20/20 2/15/20 2/10/02 2/10/20 2/10/15

(b)押出成形(チューブ、シート)

■ハイトレル®の標準押出成形条件

4057N、4047N 4777、5077
5577、6377
7277
バレル温度(°C) ホッパ側 160〜175 205〜210 205〜210
中央部 180〜195 210〜215 210〜215
アダプタ側 180〜195 215〜225 215〜225
アダプタ温度(°C) 180〜195 215〜225 215〜225
ダイ温度(°C) 180〜195 215〜225 215〜230
ポリマ温度(°C) 標準 180〜210 225〜230 225〜230
スクリュータイプ ←L/D20〜24、圧縮比2.7〜4、非急圧縮タイプ(PEタイプ)→
シート:キャストロール温度(°C)
上押えロール 室温〜40 室温〜40 室温〜40
キャストロール 40〜60 40〜60 室温〜40
下押えロール 70〜90 70〜90 70〜90
チューブ:ドローダウン比
バキュム・サイジング 2.5 2.5 2.5
素引き 4〜5 4〜5 4〜5

4.成形収縮率

成形収縮率は、成形条件および成形品形状に依存して著しく変化します。代表的な値を物性値ページにて記載しています。参照下さい。

5.金型設計

ハイトレル®用金型の設計上の留意点を以下にまとめています。

  • (a) 金型材質
    ハイトレル®は、通常使用される型材に腐食作用を及ぼさないので特殊なものは必要ありません。また、キャビティにメッキを施せば、錆防止にもなります。
  • (b) 金型の表面仕上げ
    金型表面は梨地模様や、つや消しとして仕上げると、フローマークやひけが目立たなくなります。低硬度グレードは、高度の鏡面仕上げを行なうと型離れが悪くなるので注意を要します。
  • (c) 金型の冷却
    ハイトレル®は通常の成形条件下で、1kg当り85kcal程度の熱の除去を必要とします。
    冷却管は、一様な熱伝導を行なって金型温度のむらをなくすような位置に設け、十分な流量を保つため、13mm以上の径のホースをお奨めします。
    コア類は、特殊な場合を除き、キャビティ面から一様な間隔に設け、直径の3倍以上の長さの場合はできるだけ内部冷却を行うことをお奨めします。
  • (d) スプルーブッシュ
    スプルーブッシュの設計が正しくないとスプルーが粘着したり、サイクルが長くなったりすることがあります。粘着防止のためには、ブッシュのテーパーを大きくとることが重要で、標準のブッシュ(約2.5°)より大きく取ることをお奨めします。また、ハイトレル®はゴム的な性質をもっているのでスプルーの引出しは、オフセットアンダーカットなどをお奨めします。
  • (e) ランナー
    ランナーは、圧力損失を小さくするために真円形を用いるのが好ましいが台形にする場合は、深さを最大巾の75%以上とし、コーナ部分には充分なRを設け、表面はあまり磨き上げないようにしてください。
    また、ホットランナーやランナーなしの成形も可能です。
    ホットランナーは、ランナー中のポリマの分解や、ランナーの凝固を防ぐため十分な温度制御と熱容量をもたせるようにしてください。
  • (f) ゲート
    ハイトレル®にはファンゲート、フラッシュゲート(フィルムゲート)、タブゲート等が用いられます(下記図表参照)。
    断面の厚い成形品に対してはヒケを防止するため、通常、スプルーゲートが用いられます。トンネルゲートは0.5〜1mm程度のものが用いられます(下記図「■トンネルゲート」参照)。 ゲート残りする場合は、ゲートランドの長さはできるだけ短くし、成形品表面に凹を設けてください。
    ゲートの大きさは、良好な成形品を得るためのポイントとなります。一般に厚さ1.6mmを越える成形品に対しては、ゲート厚さを成形品厚さの1/2に、1.6mm以下の場合は、成形品厚さと同じにすることをお奨めします。
    またゲートランドはゲート厚さの約1/2、あるいは0.8mmのどちらか大きな値をお奨めします。
  • ■ファンゲート
  • ■タブゲート
  • ■フラッシュゲート(フイルムゲー卜)
  • ■トンネルゲート
  • ■金型のエア抜き
  • (g) アンダーカット
    アンダーカットの深さは、ハイトレル®のグレード成形品の大きさや形状、さらに成形条件などによって異なります。0.8mm以内を目安とし、突出しを楽にするため充分な丸みをもたせてください。
  • (h) エア抜き
    ハイトレル®はエア抜きが不十分な場合、充填不足やガス焼けが生じます。ランナー、キャビティ内のエアがスムーズに排出される位置にエア抜き溝を設けてください。
    上の図にエア抜き溝の加工例を示します。
  • (i) 成形品の突出し
    深いキャビティやコアを突き出す場合0.5〜2°程度のテーパーを設けることをお奨めします。また、テーパーが取れない場合はストリッパープレートを用いることをお奨めします。突出ピンを用いる場合は、ピン径を大きくし、成形品の厚肉部分に均等に力がかかるようにしてください。

6.再生品の使用

ハイトレル®は、十分乾燥されていれば、熱安定性が良いため、原則として成形品、スプルー、ランナー等を再利用することができます。
再利用ペレットを作るには、ポリエチレン切断用に作られた鋭利なナイフ付きのスクラップグラインダを用い、未使用のペレットと同程度大に切断してください。また、再利用ペレットは必ず乾燥し未使用ペレットとよく混和して成形してください。
再利用するには、異物を含まないように注意すると共に十分な再生品管理および成形条件管理を行なってください。
再利用ペレットのブレンド率は、製品の要求性能を考慮して最適量を決めてください。
参考までに、6347の再生回数とメルトインデックス値と引張特性の関係を以下に示します。

■ハイトレル®6347のリサイクル特性

成形品重量:15gr(含スプルー、ランナー)
成形機:名機ミ二スーパー60A(3oz.60T)
成形条件:240°C、サイクル40sec.

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