
環境特性
ハイトレル®は耐化学薬品性・耐油性にすぐれたポリエステルエラストマーです。また、ハイトレル®は分子内に二重結合をもたないため、一般のジエン系ゴムに比べて、耐熱エージング特性・耐オゾン性にもすぐれており、幅広い環境で使用が可能です。
1.耐化学薬品性・耐油性
ハイトレル®は常温では、油脂類・油圧作動油類のような非極性油および酸類・塩基類・アミン類・グリコール類のような大抵の極性有機溶剤に対して優れた抵抗性を示します。また非極性油に対しては高い温度下でも優れた抵抗性を示します。しかし高温下に極性有機溶剤中で連続的に使用する場合または強酸・強アルカリ・ハロゲン化物の薬品に対しては注意を要します。
ハイトレル®はポリウレタンと比較して、常温で同等の耐油・耐薬品性を示し、高温においてはポリウレタンより優れた抵抗性を示します。また軟質塩化ビニル樹脂、軟質ナイロン樹脂およびゴム類に使用している可塑剤を含んでいないため、可塑剤の溶出による体積収縮および硬さ変化がありません。
一般的にいってハイトレル®の耐化学薬品性は、剛性の高いグレードほど良好です。下表ではハイトレル®の各薬品に接触する用途への適性につき、一般的なガイドラインを示します。表はもっぱら実験室のテストによるもので、実際の用途で遭遇する条件は考慮していません。従って表の結果はガイドとしてのみ利用し、実際の用途での条件に合わせたテストで確認して下さい。また表は主として化学的な劣化による機械特性の低下の観点から記載しており、膨潤による寸法変化等の物理的変化が起きる場合もありますので、実際の用途で確認して下さい。
硬さ | ||||
35-40D | 45-55D | 63D以上 | ||
鉱物油、グリースおよびその他の非芳香族炭化水素 | ||||
ベンゼン、トルエン、その他の芳香族炭化水素化学薬品、溶剤 | ||||
水、アルコール、グリコール類 | 常温 | |||
50℃以上 | ||||
酸類、塩基類 | 低濃度液 | |||
高濃度液 | ||||
- 適している。
- 概ね適しているが、条件によっては影響を受ける。
- 不適。
2.耐水性・耐熱水性
ハイトレル®の耐水性・耐熱水性を以下に示します。とくに耐加水分解性が要求される場合には改良処方により耐加水分解性をさらに向上させることができます。
- ■ハイトレル®の耐加水分解性
- ■ハイトレル®の耐加水分解性の改良
■ハイトレル®の長期海水浸漬特性
ハイトレル®の海水浸漬試験結果の例を以下に示します。
項目 | グレード | ||
---|---|---|---|
5557 | 7247 | ||
初期物性 | |||
硬さ(ショアDスケール) |
55 | 68 | |
10%モジュラス(MPa) |
14.9 | 23 | |
引張破断強さ(MPa) |
33.6 | 36.6 | |
引張破断強さ(%) |
425 | 330 | |
メルトインデックス(g/10分) |
8 | 15 | |
浸漬後2年後/(5年間) | |||
硬さ(ショアDスケール) |
55 | 70 | |
10%モジュラス(MPa) |
14.8 | 23.8 | |
引張破断強さ(MPa) |
33.4/(30.3) | 40.3/(34.8) | |
引張破断強さ(%) |
447/(459) | 350/(350) | |
メルトインデックス(g/10分) |
12 | 21 |
試料:ASTMD638引張試験片(2mmt)
浸漬試験条件:木製の筏から試験片を海面下約30cmのところに吊して放置
場所:米国ニュージャージー州大西洋岸
平均水温:-3.7℃〜26℃、PH約7.7
3.耐熱老化性
ハイトレル®の耐熱特性を以下に示します。耐熱性改良剤の添加により、耐熱性をさらに向上させることができます。
- ■ハイトレル®の120℃における耐熱特性
4.耐候性
ハイトレル®の耐候性を以下に示します。とくに耐候性が要求される場合には、特別な処方により耐候性をさらに向上させることができます。
- ■ハイトレル®の耐候(WOM)特性
5.耐オゾン性
ハイトレル®の耐オゾン性を以下に示します。ハイトレル®は、一般的なゴムよりもオゾンに対する抵抗性がすぐれています。
■ハイトレル®の耐オゾン性
グレード | クラック発生までの時間(hrs.) |
---|---|
4057N | 2.000以上 |
4767N | 2.000以上 |
5557 | 2.000以上 |
条件:オゾンチャンバーを使用
折り曲げテストによるクラック発生状況を観察
オゾン濃度:3ppm
温度:40℃
試料:JIS2号ダンベル片(2mmt)