ハイトレル

機械的特性

ハイトレル®は、そのすぐれた機械的性質によって、 幅広い用途に使用されています。
ハイトレル®の特性をまとめると、次のとおりです。

  1. 高温度域まで機械的強度を保持する。
  2. 低温度域まで柔軟性とゴム弾性を保持する。
  3. 応力緩和特性にすぐれる。
  4. 耐屈曲疲労性および、亀裂伝播抵抗にすぐれている。

1.硬さ

ハイトレル®の硬さは硬いゴムに相当する30Dから柔軟プラスチックの75Dに及んでいます。ハイトレル®の硬さの温度依存性を以下に示します。ハイトレル®は熱可塑性エラストマーの中では硬さの温度依存が非常に小さく、高温度域から低温度域に至るまで幅広い温度領域での使用が可能です。

  • ■ 硬さの温度依存性

2.引張特性

ハイトレル®の引張応力は、同等硬さの他のポリマーより大きくなります。そのため製品の設計に際しては、他のポリマーより製品の肉厚を薄くすることができます。ハイトレル®のすぐれた弾性的性質を生かすには、弾性限界以内(約10〜20歪以内)での使用をおすすめします。

  • ■ 低歪における引張応力
  • ■ 引張応力ー歪曲線

ハイトレル®の引張応力-歪に対する温度の影響を以下に示します。ハイトレル®の引張特性の温度依存は熱可塑性エラストマーの中では小さく、幅広い温度領域で使用できます。

  • ■ 5557の温度依存性
  • ■ 10%歪時応力の温度依存性
  • ■ 20%歪時応力の温度依存性

3.曲げ特性・ねじり特性

ハイトレル®の曲げ弾性率の温度依存性を以下に示します。

  • ■ 曲げ弾性率の温度依存性

ハイトレル®のねじり剛性率を熱可塑性ポリウレタンと比較して以下に示します。ハイトレル®は剛性率の温度依存性が小さく、同等のゴム硬度で比較した場合、常温ではハイトレル®の方が硬い傾向を示しますが、低温ではポリウレタンの方が硬くなります。

■ねじり特性

種類 表面硬さ(ショア) ねじり剛性率※(MPa)
-40°C -18°C 23°C
ハイトレル®5557 55D 121 75 60
TPU-エステル型 55D 270 135 34
ハイトレル®6347 63D 364 272 91
ハイトレル®7247 72D 635 ̶ 128

※クラッシュ・バーグ(ASTM D1043)角棒のねじり

4.圧縮特性

ハイトレル®はすぐれた圧縮特性を有し、良好な耐荷重性を示します。

  • ■低歪時の応力
  • ■圧縮応力一歪曲線

5.耐衝撃性

ハイトレル®のアイゾット衝撃強さを同等硬さの他のポリマーと比較すると以下のようになります。同等硬さのTPU(エステル型)、ナイロン11と比べて、特に低温においてすぐれた耐衝撃性を示します。

■衝撃特性

種類 表面硬さ(ショア) アイゾット衝撃強さ (J/m)
ノッチ無し Vノッチ付き
-40°C 23°C -40°C 23°C
ハイトレル®5557 55D NB NB NB NB
TPU-エステル型 55D NB NB 39 NB
ハイトレル®6347 63D NB NB 29 235
可塑化ナイロン11 65D 784 NB 29 29
ハイトレル®7247 72D NB NB 39 167

NBは“破壊せず”を表わします。

6.クリープ特性

降伏点以下の応力におけるハイトレル®のヒステリシス損失は小さく、種々の動的な用途に使用することができます。ハイトレル®の部品を低歪領域で使用すれば、ある一定の弾性回復が期待できます。

  • ■引張ヒステリシス回数と残留歪の関係

    試験片:JIS2号 ダンベル2mmt
    歪速度:20%/min
    測定温度:23°C

  • ■低歪における引張永久歪

    試験片:JIS2号 ダンベル2mmt
    保持時間:10min
    測定温度:23°C

ハイトレル®各グレードの、 23°Cでの種々の応力下の引張クリープ弾力性の経時変化を以下に示します。

  • ■ハイトレル®4057Nの引張クリープ弾性率
  • ■ハイトレル®5557の引張クリープ弾性率
  • ■ハイトレル®6347の引張クリープ弾性率
  • ■ハイトレル®7247の引張クリープ弾性率

高温における引張クリープ弾性率の経時変化を以下に示します。

  • ■ハイトレル®の高温における引張クリープ弾性率

種々の温度における一定応力下の圧縮永久歪を以下に示します。

■圧縮永久歪

応力:9.1Mpa
時間:22hrs

種類 表面硬さ(ショア) 圧縮永久歪(%)
23°C 70°C 100°C
ハイトレル®5557 55D < 1 4 8
TPU-エステル型 55D 3 9 28
ハイトレル®6347 63D < 1 2 4
可塑化ナイロン11 65D 1 3 5
ハイトレル®7247 72D < 1 2 5

ハイトレル®の圧縮・引張クリープ量は以下のようになります。

■ハイトレル®の圧縮、引張クリープ量

応力:6.8Mpa
時間:100hrs.

グレード 圧縮クリープ量(%) 引張クリープ量(%)
23°C 50°C 23°C
5557 0.6 1.3 8.0
6347 0.5 0.7 5.8
7247 0.5 0.5 2.5

注)引張クリープ量はクリープ弾性率を基に次の式で計算したものです。
引張クリープ量=引張応力/引張クリープ弾性率

7.耐屈曲疲労性

以下に示すようにハイトレル®は、屈曲時の亀裂伝播抵抗にすぐれています。

■耐屈曲疲労性

種類 表面硬さ
(ショア)
ディマチュア
(カット入り)
(ASTM D813)
破断回数(×103)
ロスフレックス
(カット入り)
(ASTM D1052)
亀裂5倍回数(×103)
23°C 121°C -40°C 23°C
TPU-エステル型 80A 1.5 1.5 瞬時破断 30
ハイトレル®5557 55D 82 18 >12 *c) >300 *a)
TPU-エステル型 55D 1.5 瞬時破断 瞬時破断 84
ハイトレル®6347 63D ̶ ̶ 瞬時破断 280
  • *a)30万回後も亀裂の成長は認められず。
  • *b)亀裂長さ3倍後の値。
  • *c)亀裂長さ4倍後の値。

8.耐摩耗性

耐摩耗性は種々の特性の影響を受けるため、試験方法に依存して変化します。従って、目的の用途に対する採用の可否は、実用試験によって確認する必要があります。参考までに、実験室における種々のテスト結果を以下にまとめています。なお、摩擦摩耗を改良したグレードも用意しております。

■耐摩耗性

種類 表面硬さ
(ショア)
テーバー摩耗
ASTM D1044
(mg/1000回)
NBS摩擦
ASTM D1630
CS-17
ホイール
H-18
ホイール
(%)
ハイトレル®5557 55D 18 64 3,540
TPU-エステル型 55D 2 55 1,200
ハイトレル®6347 63D 19 93 2,300
ハイトレル®7247 72D 16 78 4,900

9. 粘弾性

ハイトレル®の動的弾性率と動的損失のデータを以下に示します。弾性率は融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)近傍で急変しますがハイトレル®はTmからTgまでの温度範囲が広いため、いずれのグレードもその弾性率変化が熱可塑性エラストマーの中では広い温度範囲にわたって緩やかです。

  • ■動的弾性率の温度依存性
  • ■動的損失(tanδ)の温度依存性

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